2012年3月
まず最初に、三菱鉛筆UNI Laknock極細(0.5mm)のボールペンの書きやすさと、この連休を台無しにした親父を持つ最愛の家族に捧ぐ。
早いもので24日の週末から各地の小学校も春休みとなった。こどものいる家庭では、過日の23日に我が子の持ち帰った成績表や制作物などについての話題が尽きなかったのではなかろうか。8歳の娘を持つ僕の家も例外ではなかった。と言いたいところだが、実際はサラッと成績表に目を通しておしまい。そんな感じだった。
成績の話は別として、僕の娘は絵や制作が大好きで画用紙や自由帳なんか与えると、一番の遊び道具となって、コツコツ、コツコツと何かを描き続けている。気付けば家の中には、描きふるしの帳面、絵具や色鉛筆、制作に必要な道具であふれかえっている。恐らくは整理することも不可能だと思う。僕の娘が今、唯一自分から自分へ進んで取り組めることなのかもしれない。それ以外は、テレビとにらめっこ。言っておくが、人生の中で自分から自分へ取り組める時間なんて、そうゴロゴロと転がっているわけではないのだぞ。
23日の夕食時は、たしかテレビを見ていたように思う。
黙ってテレビを見る娘。黙って成績表を指で追う親父。
「ところで図工(美術)の成績は…と。ん?」悪くはないけど良くもない。「まぁ、得てしてこんなもんか」なんて思いながら早々に成績表を閉じて、持ち帰った制作物をのぞいていた。今年一年間、学校で制作した作品がずらりで、全てをひろげるとエライことになるほどの物量だ。今でも大概なのに更に家の中がひっくりかえることは見えている。ひとつ手に取っては直し、またひとつ手に取っては直すを繰り返す。「はよ風呂に入りや~」妻が用事をしながら言っている。「なぁなぁ、わたしにも観せて~」奔放に下の娘が言っている。そして、黙ってテレビを見ている上の娘。「何やらやかましくなってきたぞ」と思いながら急かされるように何作品かを観た後、ふと『ありのす』というタイトルの未完の作品に目がとまった。
「提出物が未完成?そら、あかんわ」と思ったのも一瞬。よく観てみるとB4程度の画用紙には、ぎっしりと数えきれないぐらいの「すなのつぶ」が描かれてある。
「なんじゃこりゃ」
制作をするということの彼女の解釈を確認するには十分なものだった。
24日土曜日の夜、午前0時過ぎ、家族はみんな寝静まっている。僕は、こっそりと机に仕舞われた『ありのす』あらため『すなのつぶ』を取り出して眺める。おもむろにそれをコピーし、ボールペンを握る。一粒の直径が2mm程度の「すなのつぶ」に番号を振りながら数え出す。一日半のあいだに、大き目のマグカップに入れたコーヒーを3杯とタバコ1箱半は飲んだ。
描かれてあった「すなのつぶ」は全部で1万1547個だった。
その後、未完成の『ありのす』は、カウントした『すなのつぶ』を添えて、机のひきだしに戻しておいた。そして、泥のように眠り、今朝は熱っぽかった。
2012年3月26日 22時34分 カテゴリー:「それでもドロップキック」